日々徒然 +
by perky_pat
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その日の天使
必要なものはむこうからやってくる、と言ったのは、まだ「町田町蔵」としか名乗っていなかった頃の町田康だ。僕はこのことばをティーンエイジャーの時期に、雑誌(おそらくは版型がまだ小さかったころの『Fool's Mate』)に載っていたかれのインタビュー記事のなかで読み、子供なりにそうかもね、と納得した。もっとものちに、大人になるにつれ、同じような意味合いのことがらを古からさまざまな人物が言ったり書いたりしているのを知ったが、四半世紀に手が届きそうなぐらい前に町蔵が言ったことばだけが、あたまの中にいまでも強く残っている。

以下、長くて暗い話(笑)なので、たたみます。



半年まえのある夜のこと。テレビを点けると、作家(肩書きはほかにもうんとありますとも)、中島らものことをやっていた。若い時分には、かれのことをルー・リードみたいだと思ったこともあったけれど、たぶん勘違いだったのだろう。そう興味をひかれないおひと。でも僕はお酒を飲みはじめたところだったから、そのままチャンネルをかえずに、テレビの画面を見つめていた。その時点で亡くなって5年ぐらい。回顧番組かしら。しかしながら見始めたのはどうやら番組がはじまってずいぶんと経ってからみたい。もう終わりかけているのがわかる。だけど、アルコールを舐めながら見た、その終わりかけのテレビはひじょうに興味深いものだった。中島らもがエッセイのなかで書いたことだという。極めて簡潔に書くと、「だれにでも天使がついている」ということ。その「天使」は、ひとや事物の形をしてだれのまえにもふとあらわれ、かれらを癒したり、助けたり、かれらになにかを気付かせたりする。なんてすてきな存在。そんなふうに理解して、その日はそのまま寝床に就いてしまったのだけれども、翌朝から「天使」というものを意識するようになった。おもしろいもので、じっさい、天使はそこかしこに現れた。

なんでこんな半年もまえのテレビのことを書いているかというと、つい先日犬の散歩中に会ったひともその天使だったこと、さらに天使に会ったことで、あらためて天使のことについて考えたから。週末、ちょっと離れた公園までチビ2頭を連れての散歩帰り、川沿いを歩いていると、むこうから蛍光グリーンのスポーツジャケット、同系色のスカーフ、彩度の高いピンクのリュックサック、ショートヘアはほんと真っ白、両手に杖をつき、ゆっくりと歩をすすめるおばあさんがやってきた。派手な老人はすごくチャーミングだが、かの女もじつにチャーミングだった。近付いてくる僕らのほうを見て立ち止まり、そこでにこにこしている。歳は80をすこうし過ぎたぐらい。2本の杖のことはあるが、見たところとても元気そう。興奮してペパ夫がおばあさんに走り寄る。「まだ赤ちゃん?」「3ヶ月です」「まぁ、かわいいわねえ!」。血色のいい顔に満面の笑み。両手に強く握られた杖の柄を見て、たぶん屈めないと判断した女房は、ロージマを抱え上げておばあさんの方へ歩み寄る。ロージマはかの女の顔をなめた。つぎはペパ夫を抱え上げ挨拶させる。「うちにもむかしね、シーズーがいたのよ。12歳で死んじゃったけどね」。杖とともに右の手に持った半透明のビニール袋には、ちいさなコロッケがひとつだけはいっている。いま家にいるのは、9歳になるアメリカンショートヘアの男の子。うちには、この子供ら2頭と、きょうは置いてきたけれど母親の計3頭の犬がいる、と言うと、「おうちのなかはとてもにぎやかでしょう?」って。きょうみたいな日を小春日和というのかな。その日は天気も好くてあたたかく、川沿いでしばらくのあいだしゃべっていた。そして、すごく明るい気分になって別れた。「かの女がきょうの天使かな」「そうね」。

翌日、中島らもがどのエッセイでこの「天使」のことを書いたのかが気になり、いまさらながら調べてみた。ネットって便利ですね。すぐに出てくる。それは、「その日の天使」という文章だった。僕がうだうだ書くより、なによりも中島氏が書いたそのままのものを読んでもらったほうがよいと思うので、googleにて「中島らも 天使」で検索してトップにでてきたページを、勝手ながらリンクします。ぜひとも目を通してください。なんといっても全文掲載のこのページがいちばんわかりやすいし。続けます。結論から先に書くと、このネットで見つけて読んだ「その日の天使」のテキストそのものが、その日の僕の「天使」だったわけです。



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リンク先のページ、読んでいただけましたか。ネット上にはほかにも「その日の天使」のことについて書かれたページ、ブログがまだいっぱいあるようです。天使。だれかが、あるいはなにかが訪れ、かれらに手を差し伸べる。天使とは呼ばないまでも、だれでも「天使」に心当たりがあるのではないでしょうか。また、これはもしかするとだれかが「シンクロニシティ」と呼ぶものであったり、はたまた「菩薩」と呼ぶものであったりすることなのでもあるのかなと思います。さて、文中には「天使」の例として中程にこう記してあります: 「その天使は、日によって様々な容姿をもって現れる。少女であったり、子供であったり、酔っ払いであったり、警察官であったり、生まれて直ぐに死んでしまった、子犬であったり。」

「生まれて直ぐに死んでしまった、子犬」。このことばを読むために、僕は半年前のあの日、夜中にあの終わりかけのテレビを見た、あるいは見させられたのだと思う。どうあってもパクのこども、死んでしまったセージを思い出す。死んでしまっても、でもどうにかして助けられたんじゃないか、としばらく考えたが、きっと助けてどうなるものではなかっただろう。自発呼吸すらままならない子犬なんて、どうやって飼っていく? かれはやっと生まれたけれど、自力で息をすることができず、放っておけばすぐに呼吸が止まる。だから、酸素吸入、心臓マッサージなど生命維持が施された。相当長い時間。それでも自分で呼吸できるような力の発露はなく、命を繋ぎとめておく作業を止めてくださいと僕らは先生にお願いした。セージが死んだことに意味を見いだそうとして、セージが必死で生まれてきてくれたから、大きなからだでパクチーの産道を押しひろげてくれたから、続くローズマリーとタイム、それにペッパーが無事に生きて生まれた、と思おうとした。実際そうなのに、やはり死んだという事実はとてつもなく重くて黒くて、セージのことを思い出していると、気がつけば、かれが死んだことのみをぐるぐると考えている。かれが死ななくて済む手立てがなにかあったのではないかと考えている。そういうふうに考えていくのはまったくもって良くない考え方だが、いちど考え方が固定してしまうと、それを変えるのはむつかしい。だから、「生まれて直ぐに死んでしまった、子犬」、という一文がなければ、セージが僕らの前にあらわれたその日の天使だったということに、鈍い僕は気づかなかったし、未だに考え方をかえられないままだったかもしれない。週末、散歩の帰り道に川沿いで出会ったおばあさんがこんな結末に導いてくれるなんて思ってもみなかったですよ。この世に意味のないことなどない、とよく言う。起こったことはすべてよい、とも聞く。とくに後者の「起こったことはすべてよい」ということばは、チャールズ・マンソンの言ったことばとして僕の頭の中にあるが、いま検索してみたところ、マーティン・ルーサー・キングにも同じような意味合いの発言があったことがわかった。両極に位置するとも言える人物の口から同じ言葉が出てくるとは、とても興味深い。きっとそれは真理なんだろう。

中島らものことに少し興味をおぼえたので、ちょっと調べてみたなかの、かれのwikiのページにこんな記述がありました:「神戸某所の飲食店の階段から転落して全身と頭部を強打。脳挫傷による外傷性脳内血腫のため神戸市内の病院に入院、15時間に及ぶ手術を行うも脳への重篤なダメージにより深刻な状態が続き、自発呼吸さえ出来ない状態に陥る。入院時から意識が戻る事は無く、事前の本人の希望に基づき、人工呼吸器を停止。」 合掌。どうもありがとう。


文責:vicke aka perky



出産当日 於病院
(※ 一部写真に、血液等で汚れたタオルが写っています)
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by perky_pat | 2009-11-13 22:49 | あにまるs | Comments(0)
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